第6番 太融寺
佳木山宝樹院(かぼくざんほうじゅいん)太融寺(たいゆうじ)
ご朱印
ひとすじの たきのひびきも みこえにて いちがんふどう ここにまします
家田荘子コラム 六番 太融寺
四角い空の下(もと)、梅田の繁華街の中にある寺院です。太融寺の西門をくぐると、左側に昭和43年再建の鐘楼、その向こうに、ぼけ封じ33観音霊場7番札所の観音様。そして白龍様の左後ろには、淀殿のお墓もあります。淀殿のお墓は、明治10年11月城東練兵場(現在大阪公園)造成にあたり、大阪城外鴨野郷・弁天島から移祀。九輪の塔を建て、境内の西北隅に祀ったそうです。また、梵鐘は、延宝3年の鋳造で、江戸中期の高僧、浄厳和上の撰文があります。 西門に入ってから左側をふり返るように門の隣へ行くと、鐘楼の左奥の大きなイチョウの木の下に水子地蔵尊様と、平成地蔵尊様がいらっしゃいます。
一切の病気を取り除き、諸願成就にお力を貸して下さるそうです。 西門を右に廻ると、本堂正面に出ます。ご本尊は、平安時代後期の作の千手観音様です。脇仏として、地蔵菩薩様、毘沙門天様がいらっしゃいます。千手観音様は、全部で42の手を表しています。太陽や月、武器、そして道具を持っています。定朝(じょうちょう)様(よう)の様式の影響を受けて、体の奥行きが浅いそうです。衣の模様も浅く、上品な彫り方です。頭上に仏面と、化物(けぶつ)9面の千手観音様は、大阪市内に残る古物の一つです。頭上面や手は、江戸時代に修復されました。本体は、頭部と体部を一本の木材から彫り出す一(いち)木造(ぎづくり)の技術を使ってします。 本堂の下から見上げてみると、元気のいい緑の龍や、金色の龍の装飾が目に入って来て、楽しい気分になります。昭和35年10月に再建された本堂でご挨拶をし、さらに右へ行くと、御殿の護摩堂、赤い不動堂、大師堂と続き、不動堂の前には納経所があります。また、護摩堂の前には若い修行大師がいらっしゃいます。そのお姿は、とても逞しいです。大師堂のご本尊は、江戸時代初期作の弘法大師で、光背に日輪を背負われています。 納経所の前、香炉と蝋燭台が並んでいるオープンな建物が、一願堂で、つき当たり正面に、黒いお体の不動明王様と二童子がデンと立っていらっしゃいます。天井には、沢山の「一願不動明王」と、白地に黒文字で書かれた提灯が掛けられ、いつ行っても供花でいっぱいです。サラリーマンや、赤ちゃん連れの若いお母さん、繁華街で働いていそうなお兄さんやお姉さん、元気なご高齢者……。境内に途切れることなく人が入って来てお参りをされています。地元の人々にとても愛されている人気の不動明王様です。 提灯の灯りに照らされて、不動明王様のお顔が優しく、ほんのりと見えます。ところが不動明王様の後ろに廻ると、ドキッとさせられるのです。ド迫力と力強さが伝わって来ます。まさに弱きを助け、悪をくじく不動明王様です。 昭和29年5月28日再刻という左の制多迦童子は、厳しい顔。右の矜羯羅童子は、優しい顔をされています。 一願不動明王様に手を合わせていると、前方から熱い視線を感じます。視線の先は、お稲荷様です。お稲荷様と、一願不動明王様の後ろが、岩と石と木に囲まれた奥の院で、小さな滝が流れ落ちています。お掃除の行き届いた気持ちのいい奥の院です。滝の奥の祠の中には、岩塊が祀られています。太平洋戦争で崩壊した石を集めて、お祀りしているそうです。戦前の不動明王様は、この洞窟内に安置されていました。お稲荷様と、滝の音を聞きながら、一願不動明王様をお参りします。心がとても静まって行きます。
近畿三十六不動尊霊場会先達・作家 家田荘子寺院紹介
- 名称
- 佳木山宝樹院(かぼくざんほうじゅいん)太融寺(たいゆうじ)公式サイト
- 通称
- 北野太融寺、太融寺の一願不動さん。
- 不動尊について
- 一願不動明王、石造立像。
- 縁起
- 弘仁12年(821)嵯峨天皇の勅願で弘法大師空海が建立する。当時は寺の敷地に7堂伽藍があった。元和元年(1615)5月、大阪城落城の時、焼失するが、元禄年間に復興される。 近松門左衛門の浄瑠璃「曽根崎心中」の冒頭「大坂観音めぐり」の一番として太融寺が登場する。 ご本尊様の千手観世音菩薩様は、嵯峨天皇の念持仏と下賜され、天皇の皇子・河原左大臣源融公が、この地に七堂伽藍を建立された。難波の名殺しとして、大変親しまれて来た。昭和20年(1945)戦災に遭うものの、ご本尊様だけは無事に残られた。戦後、20棟あまりが復興された。 太融寺は、近代日本政党政治発祥の地。明治11年、板垣退助など、全国の有志が大阪に集まり、民権運動を起こした。この運動は、愛国社(後の自由民主党)となり、明治13年3月17日、第4回愛国社大会、明治17年10月29日、自由党解党大会が太融寺で開かれた。
- 所在地
- 大阪市北区太融寺町3-7
- 郵便番号
- 530-0051
- 電話番号
- 06-6311-5480、06-6312-2993
- FAX
- 06-312-5454
- 宗派
- 高野山真言宗準別格本山
- 開山
- 弘法大師
- 創建
- 弘仁12年(821)
- 詠歌
- ひとすじの たきのひびきも みこえにて いちがんふどう ここにまします
- 行事
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- 1月1日~3日
- 吉祥初護摩供
- 2月節分の日
- 節分厄除、星祭祈祷会
- 3月19日
- 春季彼岸会
- 5月28日
- 一願不動柴灯大護摩供
- 7月7日
- なにわ七幸七夕まつり
- 8月10日~15日
- 孟蘭盆会
- 8月19日
- 施餓鬼会
- 9月21日
- 秋季彼岸会
- 10月24日
- 水子地蔵尊供養
- 特色
- 繁華街の真ん中の寺、新西国第二番札所。おおさか十三佛第八番札所。
- 交通 (地図はこちらをクリック)
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- 徒歩
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- JR「大阪駅」、阪急・阪神・地下鉄の「梅田駅」から東へ300m右側(曽根崎警察署前からすぐ)。
- 市バス「太融寺」下車。
- 地上の場合は、梅田から曽根崎通りを扇町方面へ進む。梅田の地下街から行った場合は「泉の広場」の「M14南側」出口を上がって、扇町方面へ行く。 地下から行っても地下街から行っても、すぐの信号機に「太融寺」という交差点名の表示が見つかる。この交差点には、左側にTokyu Rei Hotel(1階がリトルモンスター)があるので判りやすい。梅田から約300メートル。太融寺の曲がり角には、霊場会の名を彫った石柱が並んでいる。そこを右に曲がると太融寺の西門がある。 西門の前には、「ふたらくや きしうつなみは みくまのの なちのおやまに ひびく たきつせ」と書かれている。武家屋敷のような大きな門が、四角い空の下でそびえ立っている。
- 車・団体バス
- この付近は一方通行や、右折禁止、大型車乗入禁止等交通規制が多いのでよく注意すること。境内には、乗用車無料駐車可。バスは前もって寺へ連絡をとっておくこと。
- 休憩宿泊等
- 休憩可、費用志納。予約すること。
- 拝観
- 無料。
- 付近の名所旧跡
- 中之島公園、扇町公園、北野天満宮、大阪城。
- 山主
- 住職 「麻生 弘道(あそう こうどう)」