第13番 大覚寺 門跡
嵯峨山(さがさん)大覚寺門跡(だいかくじもんぜき)
ご朱印
もろもろの 病すくひし 御仏を わけてたのめよ この世のちの世
家田荘子コラム 十三番 大覚寺門跡
「参拝入口」の表示の所へ行き、まずは立派な松に迎えられます。石橋を渡ると、前方に時代劇のような立派な山門があります。山門をくぐると、地面を這うように低い這松に驚かされます。 左側に飾られている嵯峨御流のいけばなを鑑賞しながら参拝入口に向かいます。靴を脱ぎ、受付で拝観料(大人¥500、小人¥300、9時~16時半)を支払います。納経も、こちらで受付なので、朱印帳や軸を預けて、一番奥にある五大堂へと向かいます。 受付をすぎてすぐ左に、高貴で重そうな「御興」が置かれています。後宇多法皇が使用された九曜菊紋入りの御輿です。 正面に売店があります。竹の印鑑まで売っているという豊富な品揃えで、ここを無視して通過するには、相当な勇気が必要です。 その先に休憩スペースがあり、多くの人が椅子に腰かけて休憩や、スマホいじりをしています。 ここからは、順路表示に従って進んで行きます。すぐに庭園が見えて来ます。 まずは宸殿です。延宝年間に、後水尾天皇から下賜された寝殿造りの建物です。徳川2代将軍秀忠の娘である東福院和子(まさこ)様が、京都御所で女御御殿として使用していたのを賜ったものです。狩野山楽の襖絵があります。 庭は、時を忘れるほどのすばらしさです。一面の白川砂で、大海原を現わしているそうです。正面右に右近の橘、左に左近の梅があり、旧御所のなごりをとどめています。庭内は宮様御手植えの松がいっぱいです。 お堂とお堂を結びつけているのは「村雨(むらさめ)の廊下」です。縦の柱を雨、直角に折れた曲がる回廊を稲光にたとえて「いかづちの廊下」と言われています。床はうぐいす張りです。 御影堂には、後宇多法皇、恒寂入道親王、嵯峨天皇、秘鍵大師のご尊像が祀られていますが、このお堂のご本尊は、正面奥の心経殿に奉安されている勅封心経です。御影堂をすぎると、御霊殿安井堂です。もとは京都市東山の安井門跡蓮華光院の御影堂で、江戸中期の建物、明治4年(1871)に移築されました。奥の内陣の鏡天井には、舞い降りて来そうな雲龍が描かれています。 御影堂の前に唐門がありますが、「おなごりの門」と呼ばれています。大覚寺最後の宮門跡となられた有栖川宮慈性入道親王様が江戸にご出立の時、何度もふり返られたことから「おなごりの門」と呼ばれるようになったそうです。 本堂(五大堂)の方へ曲がりかけたその時、大沢(おおさわの)池(いけ)が見えて来て、(わぁ!)と心が躍ります。広大で整ったすばらしい池です。五大堂の東面には、観月台があり、存分に大沢池の鑑賞ができます。美しく妖艶な雰囲気さえ持つ大沢池の底には、京の昔からの何者かが棲みついているような気配さえ感じられます。 周囲約1.2キロ、現存する日本最古の庭池で、天神島と菊ヶ島の二つの島と庭湖石があります。この2島1石の配置が、いけばな嵯峨御流の基本なのです。嵯峨天皇様が離宮嵯峨院の造営にあたり、唐の洞庭湖を模して作られたことから庭(てい)湖(こ)とも呼ばれています。 遠くには、東山連峰が見え、正面の如意ヶ丘は、大文字山です。左手前の山は、遍照寺山と呼ばれる朝原山です。中秋の名月は有名で、秋に「観月の夕べ」が開かれます。 松尾芭蕉は、この地で、満月の夜「名月や 池をめぐりて 夜もすがら」という名句を詠まれました。 池のほとりには、裏千家お家元の設計による茶室望雲亭があり、歩くこともできます。また心経宝塔や石仏、名古曽の滝跡もあって、国指定の名勝池です。名古曽の滝とは、「今昔物語」で、百済河成が作庭したものです。 五大堂は、大沢池のほとりにあり、正面5間(約9メートル)側面も5間です。写経道場でもあり、机が並んでいます。正面にご本尊の五大明王様が並んでいらっしゃいます。正面奥は暗いのですが、ライトアップして五大明王様を照らしているので、彫りのすばらしさが浮き上がっています。 本尊は、大覚寺創建1100年を記念し、昭和50年(1975)京都の松久朋(ほう)林(りん)大仏師と、人間国宝松久宗琳(そうりん)が平安時代の明円作の模刻として新しく造像されました。 中央に不動明王様。左に軍荼利明王様、さらに左が大威徳明王様です。不動明王様の右は、降三世明王様、さらに右が金剛夜叉明王様です。 写経をされているので静かに拝みます。堂内の右端に授与所があります。愛染写経セットが売られているのを私は初めて見ました。 本堂を出て、出口に向かって廊下を歩いて行きます。途中、トイレにはびっくりしました。個室の窓がガラスではないのです。木の窓。縦に木が組まれていて、左右に窓板を移動させると隙間が出来て、外の景色が見えるのです。細かい所にも心配りと粋さの感じられるお寺です。 五大堂は一番奥にありますし、充分に時間をかけて参拝したい大きなお寺です。最低でも一時間は用意しておいて下さい。
近畿三十六不動尊霊場会先達・作家 >家田荘子寺院紹介
- 名称
- 嵯峨山(さがさん)大覚寺門跡(だいかくじもんぜき)公式サイト
- 通称
- 旧嵯峨御所、御所の寺、心経写経の本山。
- 不動尊について
- 御所の五大明王。木造座像(平安時代の明円作)重要文化財。
- 縁起
- 平安初期、嵯峨天皇が檀林皇后とのご成婚の新室である離宮を建立。これが大覚寺の前身、離宮嵯峨院となる。貞観18年(870)皇孫の恒寂入道親王を開山として開創し、大覚寺となった。 天明年間(1781~89)に再建される。 大覚寺は、旧嵯峨御所大覚寺門跡と称すが、嵯峨御所とも呼ばれる。 平安時代、嵯峨御流は、嵯峨天皇が嵯峨院の庭内にある大沢池で菊を手折り、殿上の花瓶に挿されたことによって始まった。
- 所在地
- 京都市右京区嵯峨大沢町4
- 郵便番号
- 616-8411
- 電話番号
- 075-871-0071
- 宗派
- 真言宗大覚寺派大本山
- 開山
- 恒寂法親王(ごうじゃくほっしんのう)、中興後宇多法皇。
- 創建
- 貞観18年(876)。嵯峨天皇の離宮を淳和皇后(嵯峨天皇皇女正子内親王)の発願により、清和天皇の勅許を得て、大覚寺と命名、淳和天皇の皇子恒貞親王(恒寂法親王)がご開山。
- 詠歌
- もろもろの 病(やまい)すくひし 御仏(みほとけ)を わけてたのめよ この世のちの世
- 行事
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- 1月1日、2日
- 修正会
- 2月3日
- 節分会
- 4月15日
- 嵯峨天皇献華法要
- 6月15日
- 青葉祭
- 8月20日
- 宵弘法
- 旧8月15日(仲秋の月)
- 観月会
- 11月
- 嵯峨菊花展
- 大晦日
- 除夜の鐘
- その他
- 桜まつり、紅葉まつり
- 特色
- 日本三大華道の一「嵯峨御流」の総司所である。写経の根本道場では毎月1日、11日、21日に写経法会を執行。狩野山楽をはじめ狩野派、渡辺始興等の障壁画多し。
- 交通(地図はこちらをクリック)
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- 徒歩
- 京都駅市バス28系統に(D3乗り場)乗り、終点下車。(帰りのバスは1時間に3本程度ある)。京阪三条駅、阪急四条大宮駅、阪急・京福の嵐山駅からも大覚寺行バスが出ている
- 車・団体バス
- 一条通り(宇多野嵐山樫原線)へ、広沢池の西へ出て北に入る。または嵐山へ出て高架道路を北へ、釈迦堂前から一条通りへ。大覚寺に駐車可。
- 休憩等
- 予約制。
- 拝観
- 大人500円、小人300円。宸殿、正寝殿、御影堂、安井堂、五大堂、霊明殿。
- 附近の名所旧跡
- 名勝嵐山嵯峨野(天龍寺、臨川寺、祇王寺、二尊院、釈迦堂あり)
- 山主
- 門跡「下泉(しもいずみ)恵尚(けいしょう)門跡」
- その他
- 春は大沢の桜、夏は嵯峨の送り火、秋は天下一の名月観賞、冬は雪の大沢池。