第20番 智積院
五百仏頂山(いおぶさん)根来寺(ねごろじ)智積院(ちしゃくいん)
ご朱印
ちえをつみ とくをみがくの てらなれば このよをてらす のりのともしび
家田荘子コラム 二十番 智積院
大きな大きな獅子が入口で迎えてくれます。木の門柱の右側には「真言宗智山派」、左側には「総本山智積院」と書かれています。ここが3000余ヶ寺の真言宗智山派の総本山なのです。檀家数は、およそ30万人。あの有名な成田山新勝寺や、川崎大師平間(へいけん)寺、高尾山薬王院も、3000余ヵ寺に含まれています。 左に受付があり、こちらが納経所でもあります。右に見える大きなビルは、智積院会館です。門をくぐり、松や紅葉、キキョウの間を通って参道を金堂に向かって歩きます。紅葉の季節に伺いましたら、まさに「もみじ参道」になっていました。左側には名勝庭園と宝物館があります。右側のイチョウの木々の先には、紫燈護摩道場があり、6月15日の青葉まつりでは、ここで紫燈護摩が焚かれます。 まもなく五色の幕がかけられた金堂に到着します。建物は、ピンクとグレイで彩られています。大きな大きな御殿のような金堂です。 明治15年(1882)金堂を焼失しました。昭和50年、弘法大師空海上人のご生誕1200年記念事業として建立されました。西村公(こう)朝(ちょう)の指導のもと、藤原様式で作られたそうです。 本堂の中は、開かれた大きな空間で、落ちついた雰囲気です。さすが総本山の貫禄です。正面中央に、きれいな大日如来様がいらっしゃいます。立って拝むより、坐って目線を低くした方が、大日如来様の美しさが増します。右には弘法大師空海上人もいらっしゃいます。 階段を18段下りて、護摩堂に向かいます。間にあるのは、蓮池です。その後ろの整備された道は、墓地につながっています。 きれいな広い庭園と池……多くの人が参拝や、写真撮影で訪れています。 護摩堂(明王殿)は、祈祷所、不動堂とも呼ばれています。このお堂は、京都四条にある浄土宗大雲院(だいうんいん)の本堂でした。智積院の旧本堂(方丈殿)が焼失したため譲渡されたのです。 智積院の建物には、白い5枚の花びらの紋がついています。これは智山派の紋で「桔梗紋」です。もともとは祥雲寺建立に力を注がれた秀吉の家来、加藤清正の家紋でした。 靴を脱いで、木の階段を6段上がります。障子を開けて、中に入ることもできます。中央に灯に照らされた木造座像の力強い不動明王様がいらっしゃいます。興教大師覚鑁上人ゆかりの「麦つき不動」とも呼ばれています。紀州の34番札所根来寺(ねごろじ)から伝来したそうです。不動明王様はすごい迫力で圧倒されそうですが、よく見させていただくと、とても優しい表情をお持ちです。両側に二童子、さらに左には、覚鑁上人、右には大日如来様がいらっしゃいます。 私が伺った時、ちょうど学僧たちが、夕方の勤行をしに護摩堂に入って来た所でした。 境内を歩いていた時も何人もの僧侶とすれ違いました。智積院は、お坊さんに逢える総本山です。総本山なのに、身近さを感じて嬉しくなります。紅葉に彩られた境内と、僧侶の法衣がほどよくマッチして、絵画のように、とてもきれいでした。 金堂の左側にある名勝庭園は、利休好みの庭です。中国の廬山(ろざん)を模(かたど)って作られました。祥雲禅寺時代に造られた石橋より奥の方は、自然石のみを使って刈込みを主体としているので雄大です。 滝のある正面は、江戸時代に修築され、洗練された美しさがあります。ツツジ、サツキの咲く頃が、一番美しいそうです。 納経帳には「如実(にょじつ)知(ち)自心(じしん)」という判を押されます。弘法大師空海上人の言葉です。「自分を見つめ自分を知る。これがさとりへの一歩一歩です」といった意味があります。実は不動明王様には、住むべき世界がないのです。たとえば阿弥陀如来様なら極楽浄土という住む世界があります。その代わり、不動明王様は私たちの心の中に棲んで守って下さっているのです。私たちは不動明王様がお棲みになりやすいように、心のお掃除を常にしておかないといけないですよね。
近畿三十六不動尊霊場会先達・作家>家田荘子寺院紹介
- 名称
- 五百仏頂山(いおぶさん)根来寺(ねごろじ)智積院(ちしゃくいん)公式サイト
- 通称
- 総本山 智積院
- 不動尊について
- 智彗不動、麦つき不動と呼ぶ。公開。木造座像。
- 縁起
- 弘法大師空海上人により開宗。平安末期、宗勢が衰えかけた時、興教大師覚鑁上人が高野山へ行き、真言教学を再興された。その後、智積院は、真言教学を学ぶ学問所として栄えて行く。 元和元年(1615)、豊臣秀吉が愛する子供、鶴松の菩提弔いのために建立した祥雲禅寺を徳川家康が智積院に寄進。以来、「五百仏山(いおぶさん) 根本寺 智積院」と称し、学山としての伝統を守って来た。 桃山時代に、狩野派に対抗して独自の画風を確立した長谷川等(とう)伯(はく)一派により描かれた祥雲禅寺の障壁画のうち、智積院には、桜図、松に秋草図、松に黄嵐葵図、雲松図、松に立葵図などがある。桜図と楓図は、日本の障壁画を代表する作品となる。桜図は長谷川久蔵25歳の時の作。障壁画は国宝。
- 所在地
- 京都府京都市東山区東瓦町964
- 郵便番号
- 605-0951
- 電話番号
- 075-541-5361
- 宗派
- 真言宗 智山派 総本山
- 開山
- 中興 玄宥僧正
- 創建
- (中興)慶長5年(1600)
- 詠歌
- ちえをつみ とくをみがくの てらなれば このよをてらす のりのともしび
- 行事
-
- 1月1日
- 修正会
- 1月15日
- 新年祝梼会
- 2月3日
- 節分会
- 2月15日
- 常楽会
- 3月21日
- 正御影供
- 春秋彼岸の中日
- 彼岸会
- 4月8日
- 仏生会
- 6月15日
- 弘法大師、興教大師誕生会、青葉まつり
- 8月12日
- 盂蘭盆会施餓鬼法要
- 12月10日~12日
- 冬報恩講
- 特色
- 名勝庭園と国宝障壁画。
- 交通
-
- 徒歩
-
- JR京都駅より市バス206、208系統に乗り、約10分。バスは行き帰りとも混んでいる。京都駅から歩けば20~30分。京阪七条駅からは徒歩10分前後。七条通りを行き、京都国立博物館と三十三間堂、ハイアットホテルをすぎ、つき当たりの東大路通りとの交差点を渡って右へ。すぐに入口。智積院から清水寺までは、徒歩約20分。
- 市バス東山線の「東山七条」下車、バス停前。
- 車
- 京都市内に入り東山通りへ、東山七条。境内駐車可。
- 団体バス
- 京都南I・Cまたは京都東I・Cより東山通り東山七条へ。境内バス駐車可能。
- 休憩宿泊等
- 休憩可。宿泊は100人可、宿泊費6,670円。いずれも凡そ3ヶ月前に連絡のこと。
- 拝観
- 名勝庭園、国宝障壁画、500円。
- 附近の名所旧跡
- 妙法院、三十三間堂、国立博物館、豊国神社、方広寺、清水寺、泉涌寺、東福寺。
- その他
- 5月上旬より6月中旬にかけての、つつじ、さつきは特に見事。