第24番 岩屋寺
神遊山金地院(しんゆうざんこんちいん)岩屋寺(いわやじ)
ご朱印
大聖の 祈る力は げに岩屋 石の中にも 極楽ぞあり
家田荘子コラム 二十四番 岩屋寺
左右の家並みを眺めながら、木々のトンネルをくぐり、急な坂を登った先に石段が見えて来ます。こぶしの花の左、階段の入口に大石稲荷大神様、さらに左には観音様がいらっしゃいます。 八重桜やしだれ桜を眺めながら石段を32段登って行くと、どこからか古いお屋敷の匂いがして来ます。やがて、その匂いが線香のそれに代わります。殺伐とした世俗を離れ、別世界に来たような気持ちになって来ます。 山門をくぐると脇に高野槙の木があり、歩を進めて行くと、何となく心がホッとして行きます。優しさを感じるきれいなお寺だからでしょうか。 岩屋寺は、尼僧さんのお寺です。境内のあちこちに、素朴なかわいらしさを感じます。 右を見るとまず、古い鳥居が目に入ります。弁財天様です。池の中に小さな庭があり、紅葉がとてもきれいです。小さな石橋の先に弁財天様がいらっしゃいます。境内は、かわいいくらい小さいですが、手入れが行き届いていて、目に入るものすべてによって心が洗われる思いがします。 山門入ってすぐ左の木の元には、かわいいお地蔵様の石仏が上を向いています。目が合って、思わず声をかけていました。優しい幸せそうなお顔です。 正面が本堂。山門から20歩くらいで到着です。扉には浅野家の「違い鷹の羽」の家紋と、大石家の「二つ巴」の家紋が互い違いに描かれています。 ここは赤穂義士・大石内蔵助の隠棲地で、別名「大石寺」と呼ばれています。 手水舎は門の右にあり、水の流れる音が耳に心地よく伝わって来ます。山の水を引いているから優しいのでしょう。小さな灯籠も、とてもかわいいです。「尼僧さんのお寺」らしさが、あちこちにうかがえます。 本堂へ行く途中、観音様の所を右に曲がると、さらにかわいい仏さんたちがいます。 左にある古い大きな灯籠は、忠臣蔵の物語を全国で語り歩いたという桃中(とうちゅう)軒(けん)雲(くも)衛門(えもん)さんが、明治40年5月15日に寄贈したものです。 夏になると灯篭の近くで、しゃくなげがピンクの花をいっぱい咲かせてくれます。灯篭の前には、苔がいっぱいの坐り地蔵様が。三日月の下に坐っているというかわいいお地蔵様です。さらに足を進め、弁財天様の池をすぎると、可笑庵(かしょうあん)という茶室があります。ここは、大石内蔵助の屋敷の古材を使って建てたそうです。その前には大石太夫お手植えの梅が健在です。 本堂の入口は、古い床で、大変な年期を感じます。それもそのはず、ここは、1200年も前からお寺だったのです。本堂の入口には、質素なお賽銭箱が置かれていますが、なんとも欲のない、盗られてしまいそうな置き方をされていて、心配になって来ます。 納経所は、本堂の外、左隣にあります。参拝の人は、本堂の中に入って拝ませてもらえます。本堂には龍の水墨画の襖絵があり、隣の客室の襖も水墨で描かれています。本堂の正面に木造立像の不動明王様がいらっしゃいますが、秘仏です。智証大師の作で、大石内蔵助の念持仏でした。右の壁には四国霊場開創1200年の時配られた88ヵ所ご本尊のお姿、左の壁には、平成10年明石海峡開通記念の時に配られた88ヵ所ご本尊のお姿が表装されて飾られています。 大石内蔵助は、こちらに朝晩お参りに来られたそうです。討ち入りは、ここから出発されました。 宝物館には、大石内蔵助ゆかりの遺品が展示され、47士木像を安置しています。また納骨堂の斜め前には、大石内蔵助の毛髪を埋葬した遺髪塚があります。納骨堂では、大石内蔵助座像とともに永代供養をされているそうです。 本堂には、浅野内(あさの)匠頭(たくみのかみ)長矩(ながのり)公の位牌や、47士の木像と位牌、大石内蔵助遺品などもあります。 赤穂城明け渡しの後、こちらに隠れて討ち入りの謀りごとを大石内蔵助が巡らせていたとは……。どんな気持ちだったのでしょう。今、岩屋寺は、そのような闘争心や怨恨は微塵もない穏やかで優しいお寺となっています。
近畿三十六不動尊霊場会先達・作家家田荘子寺院紹介
- 名称
- 神遊山金地院(しんゆうざんこんちいん)岩屋寺(いわやじ)
- 通称
- 大石寺岩屋禅寺。
- 不動尊について
- 秘仏(ただし12月14日から1月28日まで開扉)。木造立像。
- 縁起
- もともとは天台宗比叡山3000坊の一つだった。隣の山科神社の神宮寺だったと伝えられている。寛平9年(897)、宇多天皇の勅命で創建されるが、織田信長の兵火で、寺すべてを焼失する。その後、大石内蔵助の時代をすぎ、再び荒廃する。江戸時代末期、西川仙随尼が、復興に力を注ぎ、現在に至る。
- 所在地
- 京都市山科区西野山桜の馬場町96
- 郵便番号
- 607-8308
- 電話番号
- 075-581-4052
- 宗派
- 曹洞宗 永平寺派
- 開山
- 独掌道鳴大和尚
- 創建
- 平安時代、中興天保元年(1830)
- 詠歌
- 大聖の 祈る力は げに岩屋 石の中にも 極楽ぞあり
- 行事
-
- 4月14日
- 浅野内匠頭、義士追善法要、及び一般信者大施食会法要
- 12月14日
- 義士祭、甘酒接待
- 特色
- 大石内蔵助良雄山科閑居址
- 交通
-
- 徒歩
-
- JR山科駅より、京阪バス約20分。京阪バス西野山団地経由、大石神社前下車山手へ徒歩約8分。
- 京阪四条南座前より市バス東1~5番、京阪三条より東6番、大石神社前下車、山手へ徒歩約8分。※今秋より地下鉄東西線開通により、市バス四条河原町~醍醐線廃止予定。
- 地下鉄東西線、京都二条駅より、山科椥辻下車新十条通り西へ徒歩約20分。
- JR山科駅より京阪バス29A、「西野団地経由醍醐寺行」に乗り、約20分、「大石神社」で下車。毎時2本、15分、45分発。(JR山科駅から歩こうと、警察官に道を聞いたら「2キロ以上あって、案内本のように20分では無理ですよ」と言われて諦めました) バスを下りて左、大石神社前の交差点を左。「山急」のバス(毎時2本。京都八条口発)を下りた場合、左に看板がある。 住宅街の中、前方の山を眺めながら、ゆるい坂を川に沿って歩く。秋は、彼岸花でいっぱいになる。突き当りを左へと石の道標。途中二つに分かれ、道標の意味が判らなくなるが、まっすぐに進めば、しばらくして再び石の道標が現われる。白い案内看板もある。ここまでバス停から6分くらい。 ここから急な坂を登った先が、岩屋寺。途中、右側に「大石内蔵助山科閉居址」がある。 岩屋寺は、大石神社(右)と山科神社(左)の間にある。 岩屋寺山科隠棲地が岩屋寺の右上にあり、日本武尊稚武王が祀られている山科神社は、徒歩2分で行ける。
- 車
- 名神高速道路京都東I・Cより五条バイパスを西進、清水焼団地(新大石道)を左へ。10台は寺の下に駐車出来ます。
- 団体バス
- 経路は車の場合と同じ。大石神社前で駐車可。
- 休憩宿泊等
- 不可。
- 拝観
- 義士の資料等 400円
- 附近の名所旧跡
- 勧修寺、随心院、醍醐寺、元慶寺、大石神社、山科神社、花山稲荷。
- 山主
- 住職「大須賀(おおすが)珠心(しゅしん)」
- 特産
- 清水焼
- その他
- 桜は4月10日前後、もみじは11月中旬が見頃。