第29番 宝山寺
生駒山(いこまさん)宝山寺(ほうざんじ)
ご朱印
家田荘子コラム 二十九番 宝山寺
さすがは、有名な「生駒の聖天(しょうてん)さん」です。平日に行っても、多くの参拝者が訪れています。 ケーブル宝山寺駅から279段の階段を上がって、大鳥居へ到着します。ふり返ると生駒市の街が一望でき、シャッターチャンスです。駐車場には出店があります。そこから31段上がって惣門に到着する頃には、もう線香の匂いがして来ます。左を見ると、お大師様がいらっしゃいます。さらに9段登ると右に七福神様。55段で赤い多宝塔が見えて来て、ようやく中門です。この中門前に「歓喜天尊信条」が書かれています。 ① 歓喜天尊のご誓願にすがり、歓喜(よろこび)の心を持ち、これを行いの上に現わそう。 ② 和の教えに徹し、自他共栄につとめましょう。 ③ 大きなお恵みにより生かされている事実を自覚し、少しでも世のためにお役に立たせて貰おう。 中門から境内に入り左を見ると、草餅を販売する茶店、その右隣は広い納経所とご祈願受付所で、奉納される沢山の一升瓶のお酒が置いてあります。 境内を右に行けば、火焔光背が龍の形に見える水掛不動尊、その左隣に天神様のお社があり、牛の置物がいっぱいです。こちらで私は、亡くなった動物たちや、遍路中に出くわした命を亡くした動物、虫たちの供養をさせていただきます。 その隣に本堂があります。本堂は、延宝8年(1680)、現状に建て替えられて根本中堂となりました。5間4面、重層の護摩堂様式で、寳山寺内で最古の建造物です。毎年4月1日、こちらで8千万大護摩会が開かれます。 有名なわりに、けっして壮大ではない本堂ですが、お参りの人でとても賑わっています。 本堂正面には、無病息災、身体安全、心願成就など、沢山の祈願蝋燭が並んでいます。 本堂天井から、とても古い燈明がぶら下がっています。 本堂内には向かって左前に、剣に龍神様が巻きついた倶利伽羅竜王様、左後ろに、右手で立てた杖の上に肘をついて顎を支えているという大変珍しい制多迦(せいたか)童子がいらっしゃいます。また、左奥には、煩悩に覆われている菩提心を開くという蓮華吉祥天様もいらっしゃいます。 中央の中尊が、木像座像の不動明王様で、光背に「延宝8年(1680)本尊坐光共湛海作」と、あるそうです。不動明王様の右後ろには、昔、夜叉だったけれども心を改め使者となった怖い系の顔をされた薬厠?(やくにし)様もいらっしゃり、すごい個性の強い仏様の勢揃いです。 この方々だけではありません。 本堂のすぐ後方の山、朝日嶽の岩屋(般若窟)に岩屋のご本尊・弥勒菩薩様がいらっしゃるのです。 本堂の前に昭和27年作の大きな灯籠があり、その先の鳥居をくぐると「拝殿」へとつながって行きます。狛犬が、高野山の明神様の狛犬を小型したような、かっこいいシャープな狛犬です。拝殿は、檜皮(ひわだ)茅葺の建物で、八つ棟造りです。拝殿と棟続きの奥の天堂に、歓喜天様(聖天さん)がいらっしゃいます。お賽銭箱が、大根マークのついた巾着型で親しみが湧き、財布の紐がいっぱいゆるみそうです。 生駒山という山中にあるものの、寳山寺は、まるで下町のお寺さんのような活気ある明るい札所です。
近畿三十六不動尊霊場会先達・作家 家田荘子寺院紹介
- 名称
- 生駒山(いこまさん)宝山寺(ほうざんじ)公式サイト
- 通称
- 生駒聖天(しょうてん)、生駒の聖天さん、または単に生駒さん。
- 不動尊について
- 開祖湛海律師御自作。木造座像。公開。
- 縁起
- 開山は役行者と伝えられている。伊勢生まれの宝山湛海律師(じんかいりっし)(1629~1726)は、江戸の永平寺で歓喜天の修法を学ぶ。その後、京都歓喜院を建てて独立。円忍律師の教えを受けて、大阪府堺市の大島神社で戒を授かった。大和葛城山麓で、千日不出の「木食行」の修行をするが、成満直前に、「行をするにふさわしい山」として不動明王から生駒山を教えられる。延宝6年(1678)10月10日、湛海律師は、弟子と共に生駒山に入山する。翌年正月、仮本堂を完成させ8万枚護摩を修する寺として「大聖無動寺」と号す。10年後に伽藍が完成し、名を寶山寺と改める。 生駒にすぐれた験者がいると、噂は徳川家宣にまで広がって行ったという。以後「生駒の聖天さん」と、多くの人々に親しまれて来た。 寺伝では、「山岳仏教の祖、役行者が、ここの岩屋(般若窟)で修行し、梵字本の大般若経を納めた。空海上人も求聞持法(ぐもんじほう)の修行をした」と、言われている。 茶店の奥にある重要文化財の宝山寺獅子閣(宝山寺宮殿・迎賓館)は、1884年造立された。螺旋階段や、1、2階外柱の柱頭(ちゅうとう)飾り、色ガラスなど、明治の西洋建築に影響を受け建築された。
- 所在地
- 奈良県生駒市門前町1-1
- 郵便番号
- 630-0266
- 電話番号
- 07437-3-2005、07437-3-2006(事務所)
- 宗派
- 真言律宗 大本山
- 開山
- 役小角と伝えられ、宝山湛海律師中興とされる。
- 創建
- 斉明天皇の重祚元年(655)
- 詠歌
- あめつちの めぐみはかみの おしへなれ いこまのてらへ まいるたのしさ
- 行事
-
- 1月1日~15日
- 新年特別祈祷会
- 1月1日~3日
- 福財布授与
- 2月節分の日
- 節分会厄除星祭
- 3月彼岸
- 春彼岸会
- 4月1日
- 大護摩会式
- 5月1日~10日
- 大般若会式(この間、内陣参拝、宝物拝観)
- 5月8日
- 仏誕会
- 8月13日~15日
- 盂蘭盆会
- 9月彼岸
- 秋彼岸会
- 9月23日
- 万燈会
- 11月2日
- 仏名会
- 12月1日
- 厄除大根炊き
- 12月17日~大晦日
- 納め詣り
- 特色
- 明治の洋風建築で重文指定の獅子閣。
- 交通
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- 徒歩
- 近鉄奈良線で生駒駅下車、ケーブル線(15分毎に発車)に乗換え、鳥居前駅から宝山寺駅へ(約6分)、宝山寺駅から寺まで徒歩約10分。生駒駅までの所要時間は利用する交通機関によって若干異なるが、梅田から約40分、ナンバから約20分、近鉄京都駅又は京阪三条駅から約1時間、神戸市JR三宮駅から約1時間10分、近鉄奈良駅から約20分である。
- 車・団体バス
- 阪奈道路、宝山寺参詣専用自動車道路を経由のこと。専用駐車場完備。
- 休憩宿泊等
- 休憩・宿泊施設なし。
- 拝観
- 5月1日から10日まで、聖天堂内陣参拝、宝物拝観あり。料金定めず。
- 附近の名所旧跡
- 信貴山朝護孫子寺、生駒山上遊園地、生駒神社、金剛生駒国定公園。
- 山主
- 貫主(かんず)「大矢(おおや)實圓(じつえん)」
- 特産
- 住吉屋の「ひろうす」、十三やきもち。