第31番 大峯山 龍泉寺
ご朱印
龍泉に 汲めどもつきぬ 慈悲の水 不動の智火を かがよわせつつ
家田荘子コラム 三十一番 龍泉寺
大峯山という山は、奈良県にはありません。大峯山は、奈良県の吉野山から和歌山県の熊野まで約50キロに渡る50以上の雄大な山を数える山系のことをいいます。「西の覗き」行場で有名な山上ヶ岳のことをマスコミなどでは大峯山と呼んでいるようです。山上ヶ岳の門前町が洞川(どろがわ)で、大峯山龍泉寺は、醍醐寺を総本山とする真言宗醍醐派、當山派修験の大本山であり、大峯山寺の護持院でもあります。 透き通った清々しい山上川(さんじょうがわ)沿いの寺前通りを行くと、川と反対側に、白い石塀が続きます。寺前通りにかかった小さな行整橋は、滝行場や水行場から流れ来る水を集め、豪快な音をさせています。 石段を7段登り、三つある門のうちの中央、赤い総門に来ると、門の向こうで、紅葉がドーンと枝を張っていて、お寺内に引き込まれそうです。総門の左には、「龍王講社本部」、右には「大峯山内道場」の大きな看板がかかっています。ここ龍泉寺では、どこにいても常に清々しい水音が聞こえて来ます。それだけで心が洗われるようです。 総門をくぐるとすぐ右手が、(龍の口の※削除)「水行場」です。岩窟から湧き出た龍の口の霊水が水行場に流れており、池の中央に役行者様、その後ろの小さな島、金亀島には、弁財天様が鎮座されています。大峯行(ぎょう)のシーズンになりますと、この水行場で行者さんたちが霊水につかり、「六根(ろっこん)清浄(しょうじょう)」など声を上げて禊(みそぎ)払いをされています。心身を清めた後、大峯登拝行に出発です。 総門から赤い小さな峰入橋を渡ると、やや左正面に聖観世音菩薩様を中央に、役行者様と聖宝理源大師様を両脇にお祀りしている神聖殿があり、ここには檀信徒先亡先達の精霊を泰安されています。神聖殿の左隣に納経所。その奥が便殿庫裡です。便殿庫裡は、彦根城(滋賀県)から大正天皇の行在所を移築した建物で、便殿は、総檜造りだそうです。 便殿庫裡の前には、赤い鐘楼と、整ったきれいな庭が広がっています。 神聖殿の右隣が、オレンジと白と緑色で彩られた本堂です。昭和21年の洞川大火の後、昭和35年に再建されました。 美しい山々と川に囲まれた龍泉寺の本堂は、オレンジが特によく映え、本堂らしい風格が感じられます。17段の石段を登った右に前鬼、左に後鬼がいらっしゃいます。こういった所にも、大峯修験のお寺らしさが伺えます。 本堂は、壇上以外、靴のままで入れます。本堂中央にご本尊・弥勒菩薩様、向かって左に役行者神変大菩薩様、さらに左に修験道を中興された聖宝理源大師様がいらっしゃいます。ご本尊様の向かって右に弘法大師空海様。そして右端が大きな一願不動明王様です。 お参りに訪れると、護摩行をされている最中に当たることがよくあります。太鼓でなく、法螺貝が響き渡るのも、大峯山上ヶ岳の内道場ならではと感激します。 本堂の階段を下りて来ますと、まず水子地蔵尊様と対面します。その左(赤いアーチ橋・龍王橋方面)に祠があります。御神木鎮魂不動堂です。赤いアーチの龍王橋の先、右手にも、まるで天に届く勢いで、杉が何本も、まっすぐに伸びています。 本堂から龍王橋の手前を左に行くと、柴燈護摩道場(※賽の河原と表記して正しいでしょうか?直して下さい)です。剣不動様や、不動明王様、役行者様など、大勢の仏様が集合されています。右手には、龍の口清浄水があり、亀に乗られた善女龍王様が清く流れる川の中にいらっしゃいます。 昔、洞川に住む夫婦に子供が授かったのですが、白蛇の化身であると知られた母親は、出産後、子供に目を与えて姿を消しました。その目がなくなると、龍の口から姿を現わして、片方の目も与えたそうです。以来、この口清浄水は、枯れることなく今も湧き続けているそうです。うっとりするほどきれいな水で、見ているだけで心身も目も洗われる思いです。 龍王橋を渡った正面が、茶とゴールドのお堂・八大龍王堂です。天上龍図は、狩野派の川面?一氏の画で、池にもお堂の至る所にも龍が登場します。このお堂は、洞川大火の時に、寺内で唯一残ったお堂です。老朽化により平成13年に再建されました。 役行者様が、この龍泉寺を創建された時、大峯一山の総鎮守としてお祀りをした龍神様だそうです。 毎年10月第2日曜日(※10月1日が日曜日の場合は第3日曜日)には、八大龍王大祭が盛大に開かれています。 八大龍王堂をすぎると、大きな心宇池が広がっています。池の脇には、修行大師様と四国八十八ヵ所のお大師様が並んでいらっしゃいます。松の木の枝が被っている赤い橋を渡ると、池中央の魚籃観音様をお祀りしている祠へ行けます。大きな鯉の泳ぐ池は澄んでいて、その水は洞川の中央を流れる山上川へ流れ落ちていきます(※正しいでしょうか?間違っていたら直して下さい)。 心宇池をすぎると、正面に、坂と13段の階段の並んだ道が伸びています。近づくにつれ、水音の力が増して行きます。坂を登った左が、滝行場です。私は、20年前からこちらで、年に数回、滝行(ぎょう)をさせていただいています。いつも非常に逞しく、それでいて優しい滝水に当たらせていただいています。 滝行は水浴び遊びとは違います。庫裡に申し出をし、規則と礼儀をしっかり守って行をされて下さい。決してインスタ目的などで、瞬間水浴びをしたりしないで下さい。また、行(ぎょう)目的でない方が、滝行場に普通の格好と土足で入ることはご遠慮下さい。 不動明王様に見守られて、円錐の底に自分がいるような、宇宙を感じる、すばらしい滝行場です。夏でも水はとても冷たいです。 滝行場の横には、不動堂があります。その右から、奥に「吊り橋」方面に行ける遊歩道が伸びています。離れた所から見上げてみますと、かなり高い所に吊り橋がかかっています。山に登るのは大丈夫でも実は高所恐怖症の私は、見上げるだけで(こわっ)と引いてしまいます。 この歩道のある裏山は、奈良県指定の天然記念物となっていて、海抜850~990メートルにかけて発達するモミの木、ツガ、スギ、トチノキ、イヌブナなど、原生林が広がっています。 この地にいるだけで、心がきれいになって行くような大峯山龍泉寺です。 また、洞川の楽しみは、いろいろとあります。 洞川の町の皆さんは、行者さんや参拝者に優しく、とても協力をして下さいます。誰もが誰をも知っているような町で、龍泉寺の総門前の橋を渡ると、行者街道の左右にズラーッと宿やお店が並んでいます。ここが洞川温泉街で、冬以外は、登山者、観光客、参拝者、行者さんたちが、楽しそうに行き来しています。 5月3日の大峯戸開式から9月23日の戸閉式まで、大峯行シーズンでは、法螺貝、黄色い鈴懸(すずかけ)衣(ころも)、鈴懸袴(はかま)姿の行者さんたちが、闊歩しています。洞川というと胃腸薬「陀羅尼(だらに)助(すけ)」が大変有名です。役行者様が、黄柏(おうばく)のエキスを陀羅尼経を唱えながら煮詰めた施薬だそうです。
近畿三十六不動尊霊場会先達・作家 家田荘子寺院紹介
- 名称
- 大峯山(おおみねさん)龍泉寺(りゅうせんじ)公式サイト
- 通称
- 龍泉寺
- 不動尊について
- 一願不動。木造立像。本堂に安置。公開。
- 縁起
- 白鳳年間、大峯を開山された役行者様が、大峯山修行のために洞川に来られ、岩場の中から水が湧き出る泉を発見された。役行者様が泉に八大龍王様をお祀りして行をしたのが、龍泉寺の始まりと伝えられている。 その後、修験道中興をされた聖宝理源大師により再興された。そうして龍泉寺は、修験道の根本道場として多くの修行者が集まって来るようになった。 龍の口から湧き出る清水の水行場は、大変有名である。 昭和35年に女人禁制が解禁される。平成16年7月に「吉野大峯」と「大峯奥駆道」がユネスコ世界遺産に、「紀伊山地の霊場と参詣道」として登録された。
- 所在地
- 奈良県吉野郡天川(てんかわ)村洞川(どうかわ)494
- 郵便番号
- 638-04
- 電話番号
- 07476-4-0001~3
- 宗派
- 真言宗醍醐派大本山
- 開山
- 役小角(役行者、神変大菩薩)中興聖宝理源大師
- 創建
- 天智6年頃と伝う(667年頃)
- 詠歌
- 龍泉に 汲めどもつきぬ 慈悲の水 不動の智火を かゞよわせつゝ
- 行事
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- 1月5日
- 初弥靱会
- 2月3日
- 節分会
- 5月3日
- 大峯山戸開式
- 6月7日
- 三宝院門跡花供入峰
- 8月2日、3日
- 行者祭
- 9月23日
- 大峯戸閉式
- 特色
- どこまでも、大峯山(山上ガ岳)の内道場であり、特に5月3日の大峯山戸開式から9月22日の戸閉式までが、参拝者が多い。神道のみそぎから採り入れられた行の一つ、水行が有名。修験道の寺である。
- 交通
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- 徒歩
- 大阪阿倍野駅から近鉄吉野線に乗り、特急なら1時間少々。下市(しもいち)口(ぐち)から奈良交通バス。洞川行きに乗り、約80分。終点。洞川温泉でバスを下りたら、右は山上(さんじょう)川。左は龍泉寺の石塀。
お堂・納経所・寺務所の開所は午前8時~17時。境内は自由。 - 車・団体バス
- 国道24号線から下市を経て国道309号線で天川に至り、県道を洞川へ。
- 休憩宿泊等
- 洞川には宿泊客のため旅館あり。
- 拝観
- 無料。
- 附近の名所旧跡
- 大峯山、稲村が嶽、天川弁財天、面不動鍾乳洞、五代松鍾乳洞。
- 山主
- 院主(いんしゅ)「岡田(おかだ)育雄(いくゆう)」
- 特産
- 胃薬、陀羅尼助(だらにすけ)。
- その他
- 新緑と、秋の紅葉がよい。関西の軽井沢と言われるだけあって、夏は暑さを感じない。